Teenage Fanclub「I Heard You Looking」

1995年、「Grand Prix」を出した当時のTFCはおそろしく多作だった。アルバムからのシングルカット3曲はすべて2バージョンずつ出され、それぞれにアルバム未収録のカップリング曲が3曲ずつ。それだけでアルバムがもう一枚作れるほど。「Grand Prix」を聴き狂っていた当時、足繁く新宿のCD屋に通ってシングルを見かければ即購入していたので、「Mellow Doubt」「Sparky’s Dream」「Neil Jung」のシングルは6種類すべて持っている。以下の写真は宝物自慢である。

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カップリング曲にもいいのがたくさんあって、とくにカバーバージョンはどれも最高だった。ラトルズの「Between Us」、バッファロー・スプリングフィールドの「Burned」、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Who Loves The Sun」、CCRの「雨を見たかい」、どれもアルバム本編と同じぐらいよく聴いた。まだテープの時代だったので、本編の後にボーナストラックよろしくカップリング曲をずらっと並べた編集テープを作って、ウォークマンで毎日のように聴いていた。

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そんなカバー曲のひとつ、「I Heard You Looking」について今回は書く。「Neil Jung (Alternative Version)」に入っているヨ・ラ・テンゴのカバー。12分を超える長尺のインストで、TFCがこれまで出した曲の中で間違いなく最長演奏時間だろう。終始同じリフを延々繰り返すだけなのだが、静かな出だしから時間をかけて徐々に徐々に盛り上がっていくTFCの演奏ぶりが熱くて、このシングルを購入した当時から大好きだった。今でもほかのカップリング曲と同様、よく聴いている。


一方、ヨ・ラ・テンゴのオリジナルを聴いたことはなくて、Spotifyでこのほどはじめて聴いた。

TFCのカバーはオリジナルにかなり忠実だったことがわかる。ヨ・ラ・テンゴ、90年代当時の自分にはあんまりピンと来なくて、ほとんど聴いていなかった。今でも、十数枚あるアルバムのうち、まだ一部しか知らない。近年になって後追いで聴いて、ようやく良さがわかってきた。「I Can Hear the Heart Beating as One」はどう考えてもすばらしい名盤だし、2006年に出た「I Am Not Afraid Of You And I Will Beat Your Ass」はわかりやすくポップで大好き。アメリカ出張中にとあるレコード屋さんで手に入れたカバー集EPの「Little Honda」も最高。今にして思えば、もっと前からちゃんと聴いとけばよかったのに自分、と思うけど、当時の自分の感覚ではピンと来なかったのだから仕方がない。これからじっくり聴いていこうと思う。そんなわけで、「I Heard You Looking」が入っている93年の6作目「Painful」を聴くのも今回がはじめてだった。このアルバムもSpotifyのお気に入りに入れた。これから繰り返し聴くことになるだろう。

TFCの話に戻ると、ヨ・ラ・テンゴのメンバーが自分たちの曲のお気に入りカバーを紹介する2015年のインタビューが「SPIN」誌で読めて、TFCによるカバーについても触れている。

A Revisionist History: Yo La Tengo Pick Their All-Time Favorite Covers(英語)

TFCによる「I Heard You Looking」のカバーは、ヨ・ラ・テンゴのメンバーが知る限り、自分たちの曲のカバーが発表されたはじめての体験だったそうだ。曲を誰かにカバーされたこと自体がまだなかった上に、まさかあの大好きなバンド、TFCがカバーしてくれたなんて本当にすごいことだった、とても現実とは思えなかった、と大興奮だったようだ。いつか恩返しができるといいけど、とも語っている。ヨ・ラ・テンゴの恩返し、いつかぜひ聴いてみたい。

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