#innerlight2020

先日も当ブログで少し取り上げた「The Inner Light」は、ビートルズとして発表された曲の中でただひとつ、インドで現地録音された。ジョージの初ソロアルバム「Wonderwall Music」収録曲と一緒に、ムンバイのスタジオで録音されたインド音楽をバッキングトラックとして、ジョージとメンバーがロンドンでヴォーカルを重ねている。ムンバイにジョージが自ら赴いて制作した唯一のビートルズ曲ということで、「The Inner Light」は自分にとって特別なもの。

「Wonderwall Music」の音楽は、インド古典音楽界の著名な演奏家に協力を仰いで制作されている。収録曲のひとつ「In The Park」でイントロから出てくる、ヒマラヤ山脈からの雪解け水のように澄んだ音色の弦楽器、サントゥールを演奏しているシヴ・クマール・シャルマ師は、自分がムンバイにいた頃にも精力的に演奏活動をされていた。自分はコンサートを何度も観ている。これもまた、当ブログで何かのついでに軽々しく書けるような音楽ではない。その本質を自分がどれだけ理解できていたのか定かではないが、演奏を体験し、圧倒されながら、この地上で普通ならとても手の届きそうにない世界の一端に触れられた気がしたことは、忘れられない事実。


現在、人口13億人のインドをはじめ、全世界で相当な割合の人々が外出禁止状態。海外在住の友人知人は今おそらく全員が外出できない状況だし、日本だっていつどうなるかわからない。ジョージが1973年のバングラデシュ救援コンサートのときに設立したマテリアル・ワールド基金で、「The Inner Light」をテーマにした寄付キャンペーンが始まっている。

#innerlight2020 というハッシュタグを付けてソーシャルメディアでこの曲について投稿すれば、基金から1人分1ドルずつ寄付をするというもの。寄付先は、国境なき医師団、セーブ・ザ・チルドレン、そしてこの騒ぎで収入源を断たれた音楽家を支援する「MusiCares」という団体だそうだ。ほかならぬジョージからの呼びかけ。とはいえ、自分はもうSNSを公開ではやってないので、微々たる現金を基金に直接寄付した上で、この記事を書いた。「ドアから外に出なくても、世界のあらゆる物事を知ることができる」「遠くへと旅をするほど、真の意味で知ることは少ない」「旅をせずに たどり着くのだ」……たしかに、外出したくてもできない現状では、違った意味を持って励ましのように響いてくる言葉である。天国のジョージはこんなこと予想していただろうか。

以下はインドついでのおまけ。上に書いたように、インドでは21日間の全土封鎖(ロックダウン)がすでに実施されていて、全国民13億人が対象という、ものすごいことになっている。そのロックダウン中のインドの様子を紹介する毎日新聞のニュース動画、ちょっと笑えた。

人口13億人のインド、全土封鎖始まる 原則外出禁止、食料品店などは営業

動画の前半で、「不要不急」の外出をしている若者たちを警官が体罰で懲らしめている場面がある。若者のほっぺたや頭をばしっとひっぱたいていて、市民に暴力とは何事か、と言いそうになるが、見ていれば膝の裏で手を組む変な前屈ポーズをさせたり、腕立てやスクワットをやらせたり。これは完全にインド映画のコメディシーンで見た記憶があるやつだ。学校の先生がいたずらばかりしてる生徒を叱るシーンそのものである。これが伝統的な悪ガキの懲らしめ方なんだろう。インドで暮らしていると困った事態が次々に持ち上がるのだが、たいてい人々はこうやって軽いノリで笑いながら対処している。こういうの見てるとやっぱりインドに行きたくなる。今は行けないけど。

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